生命の大地―アボリジニ文化とエコロジーデボラ・バード ローズ
平凡社 刊
発売日 2003-06
本書は、
オーストラリア遺産委員会の依頼によって書かれたもので、先住民アボリジニにとっての景観、野生観を通して描かれたオーストラリアの記録である。筆者は
アメリカ出身、オーストラリア在住の人類学者だ。
ドリーミングと呼ばれる歴史観(創造伝説)から、
土地の管理、火や水との関わり方、西洋人入植後の人権問題まで多岐に触れながら、アボリジニ独特の世界の見方、知り方について分かりやすく解説している。しかし、アボリジニの詩歌を多く引用することで、小難しい学術的な文書ではなく、血の通った有機的な
ネイチャーライティングになっている。 第2章の『原生自然と荒地』で語られる<荒地の反語としての静かな
カントリー>という言葉が印象的だ。たどり着いた場所に旗を立てて所有権を主張し、大地の一部だけを利用する入植者と、「意味に満たされて人間化された世界」を移動しながら、全体的(ホリスティック)に土地と関わるアボリジニ。両者の大地との関わり方の違いに、これからの生態系保全を可能にするヒントが見出せるだろう。
先住民の哲学や自然観について論じた書物にありがちな、先住民=善・自然保護、入植者=悪・自然破壊というお決まりの構図にはまっていないのがいい。違いを学ぶこと、違いを
リスペクトすることの大切さを考えさせられる1冊だ。「ないものはなにもない(Nothing is nothing)」など、自分の心に響く言葉を本書に探すのもいい。(齋藤聡海)
さらに詳しい情報はコチラ≫